就業規則の不利益変更は従業員からの同意が必要なのか?と質問がありました。退職金制度があり、退職金規程で金額の計算式を定めていますが、経営不振が続いたので、この計算式に従った退職金額を支払うことが難しくなりました。そこで、退職金規程を変更し、少額となるようにしたいが、全従業員の同意で変更できますか?
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こんにちは!
大矢社会保険労務士事務所の大矢です。
就業規則を従業員にとって不利益に変更することは、基本的にはできないのですが、従業員の同意を取ることで変更することはできます。
しかし、同意の取得に関しては慎重に行う必要があります。
退職金規程の位置づけとは?
退職金規程は、多くの企業が、就業規則の本則や賃金規定とは別に作られています。
別に作られていても、労働基準法や労働契約法では、就業規則として扱われます。
労働基準法では、退職金規程を定める場合には、
- 適用される労働者の範囲
- 退職手当の決定
- 計算および支払いの方法ならびに退職手当の支払いの時期に関する事項
を就業規則に定めることとしています。
就業規則の効力とは?
就業規則の前にあるのは、従業員と会社との間で結ばれる労働契約があります。
労働契約を締結して仕事に従事しますよね!
この労働契約の具体的内容を労働条件といいます。
労働条件は従業員と会社との間で合意をして決めるのが原則なのですが、会社というのは利益を上げることが目的なので、労働条件というのをある程度統一的かつ公平に決めておくことが必要になってきます。
従業員一人ひとりと個別に合意すると、統一的かつ公平な労働条件を設定することは難しくなってきます。
そうしたことにならないようにするために、就業規則を作成して、従業員全体に適用されるルールによって労働条件を決定することで、統一的かつ公平性が保たれるのですね!
労働契約法にはそのための規定が労働契約法第7条にあります。
「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。」
ちょっと分かりにくいですので、要点は、
- 労働契約を締結する際に
- 合理的な労働条件を定めた就業規則が
- 労働者に周知されていた場合、就業規則が労働契約の内容となる
とされています。
この労働契約法の規定が就業規則の効力の根拠となり、1~3の要件を満たせば、個別に労働契約で同意を得なくても就業規則に従った労働条件とすることができます。
就業規則の変更は?
就業規則に労働条件を決定する効力があることがわかりましたね!
就業規則を変更することにより労働条件も変更できるということでもあります。
今よりも従業員に有利に変更することもできますし、不利に変更することも条件を満たせばできます。
条件というのは、
- 従業員の同意を得ること
- 就業規則の変更が合理的であること
1か2のどちらかを満たすことができれば、就業規則の不利益変更をすることできます。
ただし、2の就業規則の変更が合理的であることについては、抽象的なので、結果を予測することが難しいため、1の従業員の同意を得るという方を選ぶことになります。
不利益変更が合理的であっても、従業員の理解を得ることが企業活動では重要なので、この観点からも従業員の同意を得るということは意味があります。
従業員の同意を個別に取る必要があるので、全従業員に対して就業規則の効力を及ぼすためには、結局全ての従業員からの同意を得る必要があります。
同意の取得について
就業規則の不利益変更は、従業員の同意を得れば変更できると安易に思わずに、慎重に行う必要があります。
最高裁では、「変更により労働者にもたらされる不利益の内容および程度、労働者により変更を受け入れる旨の行為(署名等)がされるに至った経緯およびその態様、その行為に先立つ労働者への情報提供または説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否か」という判断基準を採用しているためです。
単に書面に署名をするというだけでは、同意があったとは認められない可能性があります。
賃金や退職金に関する変更で良くなればいいですが、悪くなるのであれば、普通に考えれば同意するとは思えないですよね。
通常であれば同意しないのに同意したとなれば、会社はどのような説明をしたのか、従業員の発言や検討状況が重要な意味を持つと考えられます。
まとめ
今回のような退職金規程の不利益変更に関しては、最高裁が採用している先の判断基準が適用されると考えられています。そのために、減額の幅を最小限度にとどめる努力をし、従業員が被る不利益を低くすることに、退職金の減額が必要となる理由を誠意をもって説明し、十分な検討機関を与えることが必要になります。ちなみに従業員から同意を得られなかった場合は、合理的であることで変更ができるかが問題となります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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