長澤運輸事件は、定年後に有期労働契約を締結して、引き続き会社で働く方には関係のある判決が出された事件になります。ハマキョウレックス事件と並んで注目された事件になります。長澤運輸事件は、ハマキョウレックス事件と違うのは、定年後の有期契約か通常の有期契約かの違いになります。この結果は今後影響を与えます。

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こんにちは!

大矢社会保険労務士事務所の大矢です。

長澤運輸事件

事案の概要

Y社:(長澤運輸株式会社)

一般貨物自動車運送事業を営む会社

従業員数66名

X:定年後Y社と有期労働契約を締結し定年前と同様のドライバーとして勤務

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Xの請求

(1)主位的請求 正社員との間に、不合理な労働条件の相違は労働契約法20条により無効であり、Xらにも正社員の就業規則が適用されるとして、当該就業規則により支給されるべき賃金と実際に支給された賃金との差額の支払いを求めた。

 

(2)予備的請求 民法709条に基づき上記差額に相当する額の損害賠償請求

 

最高裁平成30年6月1日判決

(1)定年制は、使用者が、その雇用する労働者の長期雇用や年功的処遇を前提としながら、人事の刷新等により組織運営の適正化を図るとともに、賃金コストを一定限度抑制するための制度ということができるところ、定年制の下における無期契約労働者の賃金体系は、当該労働者を定年退職するまで長期間雇用することを前提に定められたものであることが少なくないと解される。

 

これに対し、使用者が定年退職者を有期労働契約により再雇用する場合、当該者を長期間雇用することは通常予定されていない。

 

また、定年退職後に再雇用される有期契約労働者は定年退職するまでの間、無期契約労働者として賃金の支給を受けてきたものであり、一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることも予定されている。

 

そして、このような事情は、定年退職後に再雇用される有期契約労働者の賃金体系のあり方を検討するにあたって、その基礎となるものであるということができる。

 

そうすると、有期契約労働者が定年後に再雇用されたものであることは当該有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるか否かの判断において、労働契約法20条にいう「その他の事情」として考慮されることとなる事情に当たると解するのが相当である。

 

(2)有期契約労働者と無期契約労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が不合理と認められるものであるか否かを判断するにあたっては、両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく、当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である。

 

(3)嘱託乗務員に対して能率給及び職務給が支給されていないことについて

上告人等の基本賃金の額は、定年退職時における基本給の額を上回っている。

 

また、嘱託乗務員の歩合給に係る係数は、正社員の能率給に係る係数の2倍から3倍に設定されている。

 

このような賃金体系の定め方に鑑みれば、嘱託乗務員について、正社員と異なる賃金体系を採用するにあたり、職種に応じて額が定められる職務給を支給しない代わりに、基本賃金の額を定年退職時の基本給の水準以上とすることによって収入の安定に配慮するとともに、歩合給に係る係数を能率給よりも高く設定することによって労務の成果が賃金に反映されやすくなるよう工夫しているということができる。

 

嘱託乗務員の基本賃金および歩合給を合計した金額並びに本件試算賃金につき基本給、能率給及び職務給を合計した金額を上告人ごとに計算すると、前者の金額は後者の金額より少ないが、その差は上告人X1につき10%、上告人X2につき12%、上告人X3につき2%にとどまっている。

 

さらに、嘱託乗務員は定年後再雇用されたものであり、一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることができる上、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給が開始されるまでの間、嘱託乗務員に対して2万円の調整給を支給することとしている。

 

これらの事情を総合考慮すると、嘱託乗務員と正社員との職務内容及び変更範囲が同一であるといった事情を踏まえても、正社員に対して能率給及び職務給を支給する一方で、嘱託乗務員に対して能率給及び職務給を支給せずに歩合給を支給するという労働条件の相違は、不合理であると評価することができるものとはいえないから、労働契約法20条に違反しない。

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(4)嘱託社員に対して精勤手当が支給されないことについて

精勤手当は、従業員に対して休日以外は1日も欠かさずに出勤することを奨励する趣旨で支給されるものである。

 

嘱託乗務員と正社員との間で、その解禁を奨励する必要性に相違はないというべきである。

 

したがって、正社員に対して精勤手当を支給する一方で、嘱託乗務員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、不合理であると評価することができるものであるから、労働契約法20条に違反する。

 

(5)嘱託乗務員に対して住宅手当及び家族手当が支給されないことについて

住宅手当は従業員の住宅費の補助として、家族手当は従業員の家族を扶養するための生活費に対する補助として、それぞれ支給されるものである。

 

正社員には、嘱託乗務員と異なり、幅広い世代の労働者が存在しうるところ、そのような正社員について住宅費及び家族を扶養するための生活費を補助することには相応の理由があるということができる。

 

他方において、嘱託乗務員は正社員として勤続した後に定年退職した者であり、老齢厚生年金の支給を受けることが予定され、その報酬比例部分の支給が開始されるまでは調整給を支給されることとなっているものである。

 

これらの事情を総合考慮すると、正社員に対して住宅手当及び家族手当を支給する一方で、嘱託乗務員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、不合理であると評価することはできない。

 

(6)嘱託乗務員に対して役付手当が支給されないことについて

役付手当は、正社員の中から指定された役付者に対して支給されるものである。

 

したがって、正社員に対して役付手当を支給する一方で、嘱託乗務員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、労働契約法20条にいう不合理と認めらるものではない。

 

(7)嘱託乗務員に対して賞与が支給されないことについて

賞与は、月齢賃金とは別に支給される一時金であり、労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、労働者の意欲向上等といった多様な趣旨を含みうるものである。

 

嘱託乗務員は、定年後に再雇用された者であり、定年退職に当たり退職金の支給を受けるほか、老齢厚生年金の支給を受けることが予定され、その報酬比例部分の支給が開始されるまでの間は調整給の支給を受けることが予定されている。

 

嘱託乗務員の年収は、定年退職前の79%程度なることが想定されるものであり、嘱託乗務員の賃金体系は、嘱託乗務員の収入の安定を配慮しながら、労務の成果が賃金に反映されやすくなるよう工夫した内容になっている。

 

これらの事情を総合考慮すると、正社員に対して賞与を支給する一方で、嘱託乗務員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、不合理であると評価することはできない。

 

(8)嘱託乗務員の時間外手当

正社員及び嘱託乗務員の時間外手当の割増賃金の算定に当たり、割増率その他の計算方法を両者で区別していることは伺われない。

 

しかしながら、前記で述べたとおり、嘱託乗務員の精勤手当を支給しない結果、嘱託乗務員の時間が手当の計算の基礎に精勤手当が含まれないから、不合理である。

 

(9)以上の通り、嘱託乗務員と正社員との精勤手当及び時間外手当を除く本件各賃金項目に係る労働条件の相違については、労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらないから、上告人等の請求はいずれも理由がない。

 

上告人らは、正社員であれば支給を受けることができた精勤手当の額(上告人X1につき9万円、X2につき5万円、X3につき6万円)に相当する損害を被ったということができる。(主文で各上告人らに、上記金員および年5分の割合による遅延損害金の支払いを命ずる)

 

時間外手当の計算の基礎に精勤手当が含まれなかったことによる損害の有無及び額につき更に審理を尽くさせるため、これを原審に差し戻す。

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まとめ

長澤運輸事件によって、嘱託社員に関して判例ができましたので、今後、この判例を参考にして労働環境の整備をしていくことになると思います。こうした裁判の結果を受けて会社の体制を整えていくことは、専門の部署がないとなかなか対応できなかったりします。こうしたときは、社会保険労務士に相談して頂ければ、情報を持っていますので、対応できます。お近くの社会保険労務士か当事務所までご相談ください。

 

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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